渋柿から作る、柿渋染液

 


2017年の秋。今からもう4年も前になりますが、柿渋農家さんから渋柿を頂いて柿渋染めの染液を作りました。この時作った染液が、もうそろそろ使える頃合いになります。

以下、柿渋農家さんから伺ったお話と、実際に自宅で染液を採取した記録です。



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柿渋とは、渋柿から取る染色液のことです。
良い柿渋は、お盆を過ぎた時期に採れる渋柿からしか造れないそうです。 この時期が一番柿渋の採取に適していて、これを過ぎますと果肉と水分がうまく分離せず、思うように絞れません。甘柿でも柿渋は採れるますが、濃度は薄く、糖度は高い為腐り易く不向きです。

柿渋は、防水・防腐の特徴により塗料として平安時代末期には既に使用されています。細菌に対する抗菌能力とタンパク質を固める作用がある為、傷口、火傷に塗ると治りが良く痕が残らない、とも伺いました。 医療的な裏付けはないそうですが、健康法として発酵させた柿渋を飲む方もいらっしゃるそうです。嘘か本当か「二日酔いに効く」と、私の知人も舐めていたのを思い出します。
「柿渋を使って日本酒を濾す事で、日本酒の色が良くなる」という話も聞いたことがあります。国内で、酒製造の際に柿渋を使うことは今はもうないとのことですが、海外で製造している日本酒(アメリカ カリフォルニア)は、今もこの方法を用いているそうです。

その他にも、番傘・酒作りの用具(酒袋等)・漁網・伊勢型紙の強度を増す目的に使用したり、節約の為に漆の下地にしたり、忍者が刀に塗ったり(柿のタンニンと鉄が反応して黒色化するのを利用し、暗闇で刃が光らないようにした)とても便利な素材です。



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染液を採る


水でよく洗う


木から切り離したその日に絞るのが良いそうで、そうでないものは少しでも鮮度を保つ為に水に浸けて置くと良いらしいです。ヘタを外すと痛みが加速するので注意です。



摺り下ろす


昔ながらの方法ですと、布袋に入れた渋柿を木槌で叩いて潰します。
この時は自宅で、時間も深夜だったので、騒音にならない様に卸す方法を採りました。

ヘタを取り除いて、卸易いサイズにカットします。
柿にはタンニンが含まれているので、銅はの卸器は厳禁です。勿論、カットの際もハガネの包丁は使わないでください。
卸し器には陶器のものがお勧めです。食材を磨り潰したような仕上がりになります(金属のものは細かくカットしたような仕上がり)。





卸した果肉を布で越して第一段階が完了です。




③発酵させる

越したては薄緑色ですが、発酵させると次第に柿渋色へと変化します。
最低でも1年間は発酵させないと、商品としては成り立ちません。

そしてこちらは8年間発酵させたものです。





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染め上がり


柿渋染めとは言っても、染料ではなく顔料の為定着剤は必要ありません


柿渋染は、柿に含まれるタンニンと紫外線によって染まります。 その為、作業をする時期によって染まり方が異なります。

紫外線量の多い4月が色が濃く染まり。
紫外線量の少ない1月は色が薄く染まります。

原液100%で染めてるとゴワゴワになるので、原液:水=1:1が良いそうです。
徐々に水分を多く加えていき、何度も繰り返し染め上げることで、より美しく仕上がります。

下の画像は、和紙を染めたものです。


原液で染めると、お馴染みの柿色に



①の後に、鉄分を含む媒染液でさらに染めると綺麗なグレーに染まります。





染液はネットでも入手が出来るので、是非染だけでもお楽しみください。



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